2012年2月15日水曜日

禍福は糾(あざな)える縄のごとく(2)

いよいよ受験が始まる。まず私立の受験に5日間、そして翌週は東大受験に上京する。そのためのバッグを届けに予備校の寮に行った。久々に見る息子、落ち着いて話す時間は無く、車の中で10分程度話した。
 車内と言う密室、「オマエ、ちょっと臭い」「そう言えば、近頃、ふろ、入っとらんね」、良く見ると着ているジャージの本来白であるべきところが鼠色になっている。勉強に集中しているのだろうと良い方に考える。よし、頑張れと励まし、車を降りた息子は寮の方に帰って行った。その後ろ姿、シオタレタジャージはゴムが伸びているものか、いわゆるコシパンをさらにずり下げたようになっている。
 息子のツィッターをひそかに追尾している妻は、「ホテルは外人が多くて、ジャージじゃ何か浮いている、ってツィッターに書いとるよ、ジャージで行ったとやろか」と心配している。息子のシオタレタジャージとズンダレタ後ろ姿が目に浮かぶ。「まさか、ジャージで受験に行とるとやろか、試験官にチェックされて、服装で落とされんやろか」と妻は心配する。心配や不安はまさにこれまでの経験から出るもので、地方国立大学出の妻は、そう考えるのであろう。受験者数ベスト3にランクされる大学出身の僕は、そんなキメの細かいチェックは、東京の私立大学には無理よ、と答える。ただ、緊張感のある雑踏の中、息子があのシオタレタジャージで試験会場に向かい、ジャージがやけにずり下がったその後ろ姿が目に浮かぶと、一浪と言う瀬戸際で親としても心配で仕事が手に付かない様な状況になっても仕方がないものを、さして緊迫感が無い、何となく笑えるのは、ありがたいことでもある。

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