2012年5月18日金曜日

イニシエーション(通過儀礼)

北高に通う次男から夕方メールが来た。
「バリカン、家にある」
「前はあったけど、もうないやろ。使わんようになって、捨てたか、どっかに入りこんどる。何で?赤点か」とメールを返した。つい先日試験が終わったばかり。所属するサッカー部においては、試験の点数が悪いと試合に出してもらえないとかのペナルティーがある。もうすぐ高総体、その前に公式戦が続き、2年生の息子は貴重な戦力として試合に出ないわけにはいかない、かといって試験の点数が悪いとペナルティーを科さないわけにはいかない、そこでボウズ、となったか、と妄想癖の僕の物語は完結した。
「いや、それはない」、と返ってきた。そう、近頃次男はこれまでの無気力の殻が少しずつ破れ、意欲、を感じさせるようになった。北高普通人の75%位は、勉強するようになった。赤点は無いだろう。むしろこれから夏に向けて100番以内に食い込み、さらに上位を目指すというプランがある。しかしこれも僕の勝手な妄想なのだが。
 で、江迎についた息子を床屋に送り、10分でボウズとなった。聞くところによると、サッカーの練習でペナルティーキックの練習をしている時、不意にチームメートから
「これ外したら、ボウズね」、と声をかけられ
「おう、よかばい」と応じ、結果、外れたとのことであった。
 「冗談で済ますな。ボウズにせろ。北野は言ったらやるばい、そう思われることが大事、バカ事して、時に凶を演じることも大事、そうやって器を少しずつ広げんば」と僕もぐいぐいと背中を押した。息子も今自分はこの局面においてぜひともこうしなければならないと言う、時に使命感、時に脅迫観念、そんな天からの声を聴いてるようで、後姿は極度に緊張していたが躊躇なく床屋に入って行った。
 たかだかボウズにするだけのことではある。時を経て振り返った時に、より大きくなった自分がその時をおかしく思ったり、恥ずかしく思ったり、する。でもこれは大事な通過儀礼である、こんなバカごとをどんどんやってもらいたいと思うのである。
 娘も部活を辞めようかとずいぶんと悩み、人間関係に葛藤し、自分なりの折り合いを見つけ、辞めることを止め、後しばらくで高総体を迎える。その姿を見ながら、これから大学や社会人になるための好い勉強をしているなと感じた。
 あまり勉強しない僕ではあったが、大学時代、文化人類学という科目でイニシエーションなる言葉を知った。近頃なんとなく、この言葉が気になる。大阪市の職員刺青問題。この刺青もある種のイニシエーションである。通過儀礼と訳されるのだが、その市役所の職員はこの刺青と言う儀礼を通してどんな世界に入っていったのだろう。未だ無駄な僕の妄想癖なのではあるが、いつかはこの妄想を体系化して物語にしたい、そんな能力を身に着けたいと思っている。

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