2012年8月8日水曜日

夕涼をめがけて棚田の草払い

 愛犬の散歩コースで見るような、日々の何気ない風景に時としてドキッとするような美しさを感じる事がある。
 梅雨の間は豪雨から畔を守るために、ある程度雑草を生やしておく。梅雨が明けると虫や病気の発生を抑えるために畔の草を刈り風通しを良くする。「今日はくるきりせんば」などと昔の人はよく言っていた。「くるきり」はたぶん「繰る切」で、「繰る」は長いものを引いて手元に寄せる、たぐるの意味で、長くなった草を手繰り寄せながら手際よく鎌で切ることの意味であるのだろう。
 昔農村では働き者のオバシャンが、朝露のした朝草の繰る切りをして、それが牛のえさとなり、イネなどへの好効果となり、美しい農村風景をを作っていた。今では農村に嫁ぎ、そんな働き者のオバシャンになる人などいない。農村青年がやっと50を過ぎたころから「魂が入ってきて」、親からの指示を待つまでもなく、自主的に草を刈るようになる。勤めが終わった夕方、ちょうど涼しくなった頃でもある。「夕涼(ゆうすず)である。
 この時間帯、あちこちで草刈り機の音、薬をまくミスト機の音が谷あいに響く。畔をこれほどまでに綺麗に仕上げるには「歯」の草刈り機ではなく「ひも」のやつでしなければならない。通称ブンブンマル、稲作派のこのオンちゃんもこれのなかなかの使い手で、仕上がりが実に見事、庭園を鑑賞しているような気になる。
 畑作派のオンチャンと稲作派のオンチャンが、見事な景観を作る。この景観と言う作物は、只で頂ける、ありがたいことである。

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