2013年7月31日水曜日

土用干し 溜まったままは 膝の水

江迎から松浦に向かう途中、支流があり二つの谷に分かれる。松浦に向かって左手が中尾地区、右手が深川地区となる。中尾地区に比べ深川地区はずっと奥まで谷が続き、その行き止まりの急峻な谷に水田が張り付いている。そんな作場に育てられ、概して僕の地元・深川地区の人たちは働き者が多い。その二つの支流が合流するあたりの洲の水田では、中尾地区深川地区の農民が時として隣り合って農作業をする。
 そんな時、深川地区でも名うての働き者のユーおんちゃんに中尾地区の中核的理論派農家のある人が
 「そがん働かんばなら、月夜の時に一日中働けば!」と言われたらしい。
地区の寄合などで、「こがん事言われてさ」と始まった世間話、しかし「あっちの稗(ひえ)、凄まじかよね」と、みんな、毎年の事ながら感嘆している。あの稗に覆われた水田、深川地区ではありえないことなのである。
 そんな深川地区の谷合も、そのとっかかりで共済組合組合長のおんちゃんが驚異の粘りで先端機械化農業で棚田を維持しているものの、その途中、後継者不在で、ぽつらぽつらと荒れ地が増えてきた。深川地区最下流のユーおんちゃんの田、まるで庭園のように畔の草が土用干しに合わせて刈ってある。この時期水田の水を落とし、地割れが走るくらいに干し上げる。稲の生育、収穫時期の作業効率、いろいろな面でこの土用干しの効果はてきめんである。
 ユーおんちゃんは耕耘、水溜、アラグレ、うえしろ、田植え、などなどずっと働き通し。田に水をためようと頑張ってついに膝に水が溜まってしまった。田の水は落せても、ひざの水は抜けない。僅かに片引く足が痛々しい。
 土用干し 溜まったままは 膝の水
 季語の土用干しは、衣類や書などに涼を入れる虫干しの意味で、水田の中干しの意味は無い様ではあるが。

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